ドアの鍵を開ける。
 自分の家ではなく、幸村の家――真田の方だ。どちらに帰ってもいいように、政宗も幸村もお互いの家の鍵
 を幼いころから持たされていた。
 小十郎が出張の時、佐助が用事のある時。幼い頃から大人たちの仕事の都合で、どちらかの家で過ごすこ
 とが決まっていた。中学に上がった頃から、政宗は真田の家にあまり寄り付かなくなったが。
 久しぶりに訪れる真田の家は、女二人で暮らしている上に、家事の得意な佐助が清潔を心がけているため
 か、とても綺麗だ。あたたかな家と言うのは、こういうものなのだろうと漠然と思う。
 政宗は生家のことをほとんど覚えていない。年に数度会うか会わないかの両親や親族など、どうでもいいと
 思っている。自分のは家族などいない。いや、いないと言うのは間違っている。血のつながりなどなくても、佐
 助は母親のような存在だし、小十郎は父親のようなものだ。
 そして、妹のような存在だった幸村は―――大切な女の子に変わっていった。

「幸、靴脱げるか?」
「……はい」

 玄関でそう問いかけると、幸村は足をすり合わせて靴を脱ぐ。
 降ろそうとすると、嫌がったのだ。だから仕方なく、横抱きのままでいる。
 政宗は自身も靴を脱ぐと、ソファーのあるリビングへと向かった。

「…座ってろ。何かあったかいもんでも飲んで寝ちまえ」

 幸村の定位置でもある、赤いクッションの置いてあるソファーに降ろそうとするが、栗色の頭は横に振られるだ
 けだ。

「…幸」
「いや、です。…離れたくありませぬ」

 ぎゅう、と。首にまわされた腕に力がこもる。
 必死なその顔色はまだ悪い。
 政宗は嘆息して、幸村を抱えたままソファーに腰を下ろした。

「なぁ…朝も具合、悪かったのか?」

 ぐっと詰まったような顔に、小さくため息を吐く。
 幸村は感情が顔に出やすいタイプだ。長く一緒にいるため、政宗には彼女の感情の揺れがよくわかる。
 それなのに気付けなかった。いや、気付こうとしなかった。
 細い腰にまわした手に力が入る。幸村の身体がひくりと震えた。

「……悪かった。朝」
「…え?」
「あんなこと言って。お守だなんて、思ったことはない」

 抱き締めたような体勢でそう囁くと、大きな茜色が腕の中から必死に見上げてくる。
 視線を合わせてやると、ふにゃりと相好を崩した。

「よか、った…」
「An?」
「いつも、甘えてばかりだから…。き、嫌われてしまったんだと思って」
「ゆき、」
「よかったぁ…。まさ、むね殿に嫌われたら―――もう、どうしていいか、わからない…」

 嫌われていなくて良かった、と。泣きだしそうな声で言う。
 潤んだ茜色が政宗を映して嬉しそうに細められた。
 首にまわされたままの腕がそっとはずされ、政宗の胸元に添えられる。柔らかな頬を肩に擦り寄せながら、幸
 村が微笑む。
 柔らかな肌。甘い匂い。幼い頃と何も変わらない信頼。
 ―――心の隙間が、満たされてしまった。

「……ゆき」

 幼い頃から、ただ守りたいと思っていた。その想いは今も変わらず、この胸の内にある。
 抱きしめたい。優しくしたい。けれど反対にめちゃくちゃにしたい。泣かせたい。
 どちらの想いも、傍にいたいのなら、抱えて行くしかない。
 全部自分の中にあって、消せないのだ。ならばいい加減、覚悟を決めるべきだろう。
 政宗は口角をあげて笑うと、幸村の額にそっと唇を押しつける。

「…政宗殿?」

 きょとん、と大きな眸を瞬かせる幸村に久しく見せていなかった笑みを浮かべて見せる。
 途端に紅く染まった頬に気を良くして、政宗は幸村を隙間なく抱きしめた。

「俺がお前を嫌うなんてこと、ありえねぇから安心しろよ」
「本当ですか…」
「Of course. I am ordinary.…Is it unbelievable?」

 額を重ねて話すのは、昔からの習慣のようなものだ。
 相手の睫毛の長さすらわかる距離で話す時は、仲直りの合図。暗黙の了解のようにそう決まったのはいつか
 らだったか。
 二人が小学生の頃までは幾度となく行われていたこと。けれどさすがに中学に上がってからはしていなかった。
 だからだろうか。幸村が自分の身体を押しつけるようにして甘えてくる。
 柔らかな身体はほのかに血の匂いをさせていた。
 そういえば、彼女は今日「女」になったのだ。

「幸、なんか飲み物用意してやるから、風呂行って来い」
「え?」
「その、着替えた方がいいだろう?…佐助いなくても、やり方わかるか?」

 中学生にもなれば一応、一通りのことは知っているはずだ。
 だが佐助もいないこの状況で、幸村に生理用品の使い方など教えられる者はいない。
 幸村の頭を撫でながらそう問うと、彼女は頬を紅くして小さく頷いた。

「一応、佐助に習っておりまする。その、なかなか来なかったので…」
「あー…まぁ、人それぞれだろ」
「そう、ですけど…」

 微妙な空気に「しまった」と思うが、とにかく幸村を休ませるために連れ帰ってきたのだ。
 貧血もずいぶん良くなったようだが、これからまた具合が悪くなる可能性が高い。佐助が帰ってくるまでは傍に
 いた方が安心するだろう。
 政宗は幸村をそっと膝から降ろすと、浴室の方へと背を押した。

「Hot milkでも用意してやるよ。…Honeyたっぷり入れたの、好きだろ」
「はい」

 甘いもの好きなところも、変わってはいないようだ。
 微笑で頷いた幸村に笑い返して、政宗は勝手知ったるキッチンへ向かう。
 背後でシャワーの音がしだした。自分用のコーヒーと幸村のための温めた牛乳、それから昼食代わりに何か腹
 に入れるものを作らなければならない。あがってくるまでに準備をしておこうと、棚から小麦粉やベーキングパウ
 ダーを取り出し始めた。






 幸村が風呂からあがってきた時、政宗はキッチンの調理台に寄りかかり、マグカップを傾けていた。
 甘いバニラの匂いは昼食を食べていない幸村のために、政宗がわざわざ何か作ってくれたのだろう。
 政宗の目と同じ、深い藍色のマグカップは幸村が選んだものだ。そしてホットミルクが入っているのだろう、緋色
 のマグカップは政宗が選んだもの。
 数年前に色違いのお揃いで購入したのだ。
 しばらく使われていなかったそれを傾ける姿に、歓喜が込み上げる。その感情のままに政宗の背中に飛び付
 いた。

「うぉわ!?」

 たった二歳しか違わないのに、男女の差か、政宗の背中は広い。まだ小十郎ほどではないが、幸村の身体
 を包めるほどには大きくなった。
 慌てたような声と、振り向く気配。しがみつくように腕をまわして、顔を埋める。
 ―――政宗の匂いだ。幼い頃はいつでも近くにあったのに、近頃は遠くて寂しかった。学年の違いや、性別
 の違いはあれど、ずっとずっと傍にいるのは変わらないと盲目的に思っていたのに。
 今頃になって朝から突き放された寂しさや悲しみが溢れて来て、不安になる。

『もう近づいてくるな。…アンタのお守をすんのはウンザリだ』

 今まで向けられたこともないような、冷ややかな藍色に身体の中心に氷を滑らせたような感覚がした。
 けれど冷たいのに、なんだかひどく痛々しく見えて。だてに長く共にいるわけじゃない。政宗の気持ちなんて、
 政宗以上に知っている。
 だからこそ、笑って見せた。振り払われた手は痛かったし、身を斬られるかのような恐怖に襲われたけれど、政
 宗の方が痛そうに見えたから。
 体調の悪さを押し隠していたことは、かすがには気づかれて何度も保健室に行くように言われた。大丈夫だと
 思っていたが、結局倒れて心配をかけてしまったことには申し訳なさを感じる。あとでメールでもしておこう。
 顔を埋めたまま、思考を巡らせていると、振り返った政宗がため息をつくのが聞こえた。

「幸」

 ぽんぽん、と大きな手が幸村の頭を撫でる。
 そのまま柔らかく抱き締められて、そのぬくもりにひどく安堵した。
 幼い頃もよくこうして抱き締められていた。幸村の体調が悪い時、哀しい時、寂しい時。どんな時も政宗が
 幸村の心の機微を感じ取り、傍にいてくれた。そのことを思い出して、じわりと胸が熱くなる。
 目を瞑って耳をすませると、広い胸から鼓動が聞こえた。一定のリズムのそれが、幸村のものと重なる。

「…眠いのか?幸」
「まさむねどの…」

 心地よい腕の中は、佐助の腕の中より安心する。
 すり寄ると困ったように微笑まれた。

「髪、まだ濡れてんじゃねぇか。…乾かしてやるからこっちきな。その間にほら、せっかく用意したんだから飲めよ」

 ひょい、と横抱きにされ、ソファーに座る。先程と同じく、政宗の膝の上だ。抱きこむ腕に身をゆだねて、用意
 してもらった甘いホットミルクを飲む。じくじくと痛む腹が少しだけましになった気がした。
 ドライヤーを取りに行こうと、政宗は幸村をソファーに降ろして踵を返す。向けられた背中に恐怖を覚えて、幸
 村は自分の身体をきつく抱いた。

「…寒いのか?」

 戻ってきた政宗が不思議そうな目で聞いてくる。それにゆるく首を振りながら腕を伸ばすと、慣れたように抱き
 あげられた。
 政宗の足に挟まれる格好で座り、髪を乾かされる。熱風と大きな手が頭を撫でるのが心地いい。長く伸ばし
 た髪は自分で乾かすには面倒でついつい適当にしてしまうが、今日は政宗が丁寧に梳かしてくれるおかげで
 サラサラだ。

「飲み終わったんなら部屋に行くぞ。具合悪いんだし、ベッドに横になった方がいいだろ?」
「…眠りたくありませぬ」
「さっきは眠たそうだっただろ。…血が足りなくて、身体もだるいはずだ。横になって休め。ああ、食えるなら作っ
 たヤツも食え」

 幼子に言い聞かせるかのような言葉に、幸村は首を横に振る。くらりと視界が暗くなったが、それでも政宗に
 しがみついた。

「いやです…」
「Why are you?」
「だって眠ったら、政宗殿が離れてしまう」

 必死になりすぎて、政宗の紺のベストに爪を立てる。
 こんなことをしても、困らせるだけだと脳裏で冷静な自分が囁いているのに。なのにこの手を離せない。
 頭上から聞こえてきたため息に、びくりと肩が揺れる。
 呆れさせてしまっただろうか。―――このまま、また離れてしまうのだろうか。

「…OK. Because there is it together, feel relieved.」

 囁く声が耳元に降った。
 おそるおそる顔をあげると、政宗が藍色を細めて幸村を見下ろしていた。その視線は、甘く優しい。

「しょうがねぇなぁ…」

 困ったと言うよりは仕方がないな、とでも言うような。そんな声音は父親代わりの小十郎によく似ている。
 昔と何も変わりはしないのだ。幸村にとって政宗はどの「好き」にも当てはまらないくらいに大切な存在で、隣
 に居るのが当たり前で。
 政宗の首元に顔を埋める。慣れ親しんだ匂いと、少しだけ甘いバニラのような匂い。深く息を吸うと、くすぐっ
 たかったのか肩を竦められた。

「幸、抱っこしててやるから、ホットケーキ食って寝てな」
「…離れないでくださいますか」
「Of course.ずっと傍に居てやるよ」

 背中を宥めるように叩かれ、幸村は頭をぐりぐりと押し付ける。
 ソファーに背後から抱かれる形で座ると、政宗が端に畳まれて置いてあったブランケットを幸村の腹部にかけ
 た。背中には政宗のぬくもり、腹にはブランケットで痛みが緩和される。
 綺麗な円を描くホットケーキには甘いいちごのジャムがかかっていた。蜂蜜やメイプルシロップも好きだが、赤い
 ジャムが好きなことを覚えていてくれたのだと、思わず頬が緩む。

「昼飯まだだろ?食わねぇと貧血がひどくなるからな…」
「…政宗殿はお昼ごはん、どうなさるのですか」
「Ah?俺はあとで―――」
「そう言って忘れてしまったり、面倒になって食べないでしょう!」

 頬を膨らませながら言うと、政宗がしまったとでも言うような顔をする。
 器用だからか作るのは巧いのに、あまり食べようとしないところも変わっていない。
 幸村はあまりジャムのついていないところを切り取ると、政宗の口に押しつけた。

「政宗殿もちゃんと食べてくだされ!」
「む、わ、わぁったよ!」

 差し出されたフォークを薄い唇が食む。そのまま政宗は奪い取ったフォークで今度はジャムがたっぷりのった塊
 を幸村の口元に運んだ。
 満足そうにぱくりと甘いそれを食べる仕草に餌付けをしている気分になる。あながち間違ってはいないだろうけ
 れど。
 そうやってホットケーキを分け合うと、皿の上はあっという間になくなってしまった。全て食べ終わって満足したの
 か、再び幸村がすり寄ってくる。

「…幼いころに…私がまだ小学校に上がる前くらいの頃に…こうして二人でお留守番をしたことを覚えています
 か…?」

 とろりとした茜色が見上げてくる。腹が満たされて眠気が襲ってきたのだろう。政宗は小さく笑いながら頷い
 た。

「覚えてるぜ?あの時もホットケーキ食ったんだったか…」
「はい…。佐助がおやつに作ってくれたのです。…その味と、おんなじ…」

 閉じかかった目を懸命に開けようとする幸村の頭を撫でてやる。身体をずらしてソファーに寝そべると、軽い身
 体も同じように落ちてきた。
 そう広くはないソファーに二人で寝そべりながら、幼い頃のことを話す。そのうち茜色は瞼の向こうに閉ざされ、
 見えなくなってしまった。肩のあたりにある栗色の髪が空気を入れ替えるために開けた窓から入る風に揺れ
 る。押さえるように撫でていると、眠っているはずの幸村は嬉しそうに微笑んだ。その笑みがあまりにも愛しく
 て、政宗は白い頬にそっと唇を寄せる。安堵に満ちた寝顔も変わってはいない。
 甘い寝息が昼下がりのあたたかな部屋に静かに響く。柔らかな身体を抱えなおして、政宗も襲ってきた眠気
 に逆らわず目を閉じた。










 見上げた窓が暗かった。
 今はもう夕方で、そろそろ暗くなる時間帯だ。今日は部活がないと言っていたから、帰宅していてもいい時
 間。隣の家の電気もついていないと言うことは、隣もまだ帰宅していないのだろうか。政宗は遊びに行っている
 のかもしれないが、幸村は連絡もなしに遊びに行くような子ではない。もしかしたら寝てしまっているのかもしれ
 ない。首を傾げながらも佐助は玄関のドアを開けた。

「ゆきー?」

 小声で呼んでみるが、何の物音もしない。
 しかし玄関には靴がある。四方に転がっているローファーは幸村のものだ。けれどもう一足、明らかに男物の
 靴は違う。小十郎のものでもない。

「珍し…政宗が来てるのかな」

 年齢を重ねるにつれ、政宗は幸村を遠ざけていた。少しずつ距離が出来ていたようだった二人が、珍しく一
 緒に帰宅したらしい。
 佐助は忍び足でリビングに向かう。靴があるのなら隣の家ではなく、ここにいるはずなのにこうも物音がしないと
 言うことは―――。

「…あらま、本当に珍しい…」

 リビングのベランダ近くに置かれた、女二人が暮らす家にしては大きめのソファーの上。はみ出た足の先を追え
 ば、聞こえるのは穏やかな寝息。これが幸村一人ならよくある光景なのだが、背後から幸村をすっぽりと抱き
 こんだ政宗の姿に、佐助は軽く媚茶の眸を瞠った。
 この上なく心地よさそうな寝顔は、幼いころに見たきりだ。どうしてこういう状況になったのかはわからないが、気
 軽に起こせそうにないほど寝入っている。

「まったく…いくつになっても可愛いんだから」

 苦笑しながら、佐助は仕舞ってあった毛布を二人の身体にかけてやる。こういうことをするのも久しぶりだ。彼
 らがもっと幼い頃は遊び疲れて寝てしまった時、こうして世話をしたものだ。

「おっきくなっちゃうんだもんね。…いつまでも子どもじゃない、か」

 だんだんと手がいらなくなっていく子どもたちを見ているのは嬉しくて少し寂しい。特に最近、幸村は元気がな
 いようだった。おそらく政宗と距離が出来たことに戸惑っていたのだろう。
 成長と共に開いていく男女の差や、気持ちの揺れは佐助にも経験がある。幸村はまだ幼さが残っているが、
 政宗は元々大人びていたからか、手を離れるのが早かった。肉親の暖かさを知らずにいた少年はどこか冷め
 たような眼でいつも遠くを見ている。唯一、幼い頃から共にいる幸村に対してだけは人間らしい感情を向けて
 いたのに、ここ数年はなんとなく距離があった。
 けれどこんな風に眠る二人を見ていると、根本的なところは何も変わってはいないのだとわかる。
 そっと二人の頭を撫でていると、鞄からバイブレーションが聞こえてきた。音に敏感な政宗が起きてしまうと、慌
 てて携帯電話を取り出す。

「あ」

 届いたのはメールだった。差出人は今は旦那となった人。
 どうやら今日は予定が変わり、早めに帰ってこれるらしい。会議の日程が変わることもままあることだ。佐助も
 スケジュールが変わるなんてざらにある。
 夕食は久しぶりに四人そろって食べることができそうだと、一人笑った。

「そうだ。えっと、小十郎さんへ―――」

 お疲れさまと題名に打つと、佐助はそっとソファーに近づく。携帯電話のカメラ機能を選択して、未だ眠る子ど
 もたちに向けた。





 車に乗り込んだ時に、携帯電話の着信が聞こえた。特に何の設定もしていないそれは、何の変哲もない電
 子音を鳴らす。一度妻に着信の設定を変えられ、ひどく困ったことがあった。それ以来、常にマナーモードにし
 ているが、仕事が終わった今は通常に戻していた。
 おそらくは先程送ったメールの返信だろうと、シートベルトをつけながらメールを見る。

「………これは…」

 小十郎は思わず目を瞠った。
 携帯電話の画面には妻からのメールが表示されている。
「今日はこっちの家でご飯だからね!」と書かれた文字の下。添付されている写真はあまりにも珍しく、そして
 懐かしいものだった。

『あんまりにも可愛かったから写メっちゃった☆』

 熟睡しているらしい二人の様子に、頭を抱えるべきなのか微笑ましいと評すべきか迷う。一応年頃なのだか
 ら、と諭すには躊躇いが生まれた。
 幸村に対して、どう接していいか迷っていた政宗を見守っていた小十郎としては喜ばしいのだが、複雑であ
 る。
 小十郎が帰りつく頃にはきっと目を覚ましているだろう。何があったのかは知らないが、政宗の悩みが解決した
 のならそれでいい。
 嘆息しながら、小十郎は久しぶりにケーキでも買って行こうかと車を右折させた。




 小十郎が帰りついた時、顔を真っ赤にした幸村と、困ったようにそれを宥める政宗と、赤飯と幸村の好物を
 作っている佐助が出迎えて。なんだかんだと騒がしい夕食になったのだけれど―――。
























     ういごころ ――後編





 
 
 
 
 
 
 
 


       開き直った政宗様はドロドロに甘やかすのがお好きなようです←
       ホットケーキは私の気分で作らせました(笑)幸村には甘いものを与えるのが
       良いと思います。食べさせあいは自然と出来る子たちです。
       最後は保護者にも登場していただきました。この二人はもう結婚してます。
       
         2011/08/09 もう手放せないって、わかってるから。